みなさんは「レジリエンス」という言葉をご存知ですか?
人間は生きていく上でさまざまな困難に直面しますが、忍耐強くそれらに対処するには「レジリエンス」を高めていくことが重要です。
「レジリエンス」は「回復力」とか「復元力」、あるいは「弾力」ということを意味する言葉です。
特に、変化の多い現代社会において心身ともに健康的で豊かなウェルネスライフを送るためにはレジリエンスが不可欠です。
この記事ではレジリエンスの概要と重要性、身につける方法について解説していきたいと思います。
レジリエンスとは何か?
レジリエンスの定義
「レジリエンス」とは使われる分野によってその意味が異なります。
たとえば物理学や工学の世界では「弾力」という跳ね返す力として用いられますが、ウェルネスライフを実践する上では、人生におけるストレスや困難に対処できる力、跳ね返す力、不屈の立ち直り力としての「レジリエンス」という、心理学においての定義で話をを進めていきたいと思います。
この定義での「レジリエンス」を簡単まとめると、
「自分で自分を励まし、元気づけ、立ち直らせること」
といえます。
状況的に他者の助けを借りることはあっても、それは助けを得られるように自分が行動した結果であって、立ち直ろうと決意し、そのために行動をさせているのはあくまで自分であるという考え方です。
イメージ的には自家発電しているような感じですね!
ここからは、レジリエンスをより深く理解するために、「レジリエンスのある人」と「レジリエンスのない人」の特徴を、それぞれ挙げていきたいと思います。
レジリエンスのない人の特徴
レジリエンスのない人は基本的に困難やストレスに立ち向かい、解決する能力が低いため、「逆境に弱い」と言えますが、その要因としては次のような特徴があります。
- 他人に依存している
- 心の支えがない
- 受け身である
- 主観的な視点しか持つことができない
- 自己欺瞞に陥っている
他人に依存している
レジリエンスのない人は、基本的に他人に依存しており、人に気に入られるために生きています。
人から褒められるといい気持ちになり、批判されると嫌いになります。
相手の言葉に反応しているだけで自分の意思に従って動いていないため、何か問題が起これば責任転嫁して相手を責めますし、そのことに対して腹を立て、落ち込み、憂鬱な気分になり、とても問題を解決できる精神状態にはなれません。
心の支えがない
レジリエンスのない人は、自分の過去に経験したことを否定して受け入れないため、心の支えがなく、自分で自分を奮い立たせることができません。
心が不安定でいつもイライラしており、自信がなく、自分で自分を古い立たせることができません。
受け身である
レジリエンスのない人は、自分から積極的に行動せず、起きたことに対して嘆いたり、諦めたりしてただ状況が変化するのを待ちます。
また、未知のことに対して不安を感じてさけようとしたり、悩むことに囚われて行動できなかったりします。
基本的に行動するエネルギーに欠けます。
主観的な視点しか持つことができない
レジリエンスのない人は複数の視点を持つことができません。
常に主観的に物事をみてしまうので、自分を客観的にみることができず、自分の状態を正確に把握することができません。
自己欺瞞に陥っている
レジリエンスのない人は、現実を受け入れないで、自分が「現実だ」と思いたいことを現実として受け入れて対処してしまいます。
格好つけて自分の過去を否定し、自分のやましさを正当化したり本当の感情を抑圧してしまうため、心理的に未解決な問題が溜まってしまい、不愉快になったり、傷ついたり、イライラしたり、落ち込んだりしてしまいます。
そしてコミュニケーション力を失い、起きたことに対して反発し、文句を言ったりしてしまうため良い人間関係ができません。
レジリエンスのある人の特徴
それでは反対にレジリエンスのある人の特徴をみていきましょう。
一言で言えば「逆境に強い」と言えますが、その特徴は以下のようなものがあります。
- 起きたことを受け入れる
- 過去に執着しない
- 他人に依存していない
- 心のバランスを維持する
- 複数の視点を持つことができる
起きたことを受け入れる
レジリエンスのある人は起きたことを受け入れ、解決に向けて自分ができることをします。
失敗や困難な状況に対して諦めて何もせず受け入れるのではなく、自分が成長するための糧として受け入れ、解決に向けて自分ができることをします。
変革の時は、嫌なことではなく、成長する時期として受け入れるのです。
過去に執着しない
レジリエンスのある人は、過去に執着しません。
自分の過去を受け入れますが、それに執着するのではなく、その経験を消化吸収して今の自分があるのだと言うことを理解しています。
執着しないので、得られると期待していたものが得られなかったとしても、あっさりと諦めることができます。
他人に依存していない
レジリエンスのある人は、他人に依存していません。
人から好意を持たれるかどうかに関わらず、自分のしたいように行動するため、心も安定しています。もし意見が合わない人と関わっても、相手を変えようとはせずに受け入れ、対処します。
そして自分が人間としての弱点を持っていることを認め、何か行動を起こす時にも本当に自分がしたいのだという思いをもって行動するため、他人に依存はしていないのに結果的に多くの人から助けられるという好循環が生まれます。
心のバランスを維持する
レジリエンスのある人は、心が安定していて、苦しい現実をに対して反発や萎縮をせず、柔軟に対応して乗り越えます。
自分の感情や言動を俯瞰的に把握し、コントロールすることで心のバランスを維持します。
複数の視点を持つことができる
レジリエンスのある人は、主観的な視点に捉われません。
複数の視点を持つことができるので、客観的に自分を見て冷静に判断することもできるし、他者の考えを理解して円滑に話を進めることもできます。
レジリエンスのない人が育つ要因
それぞれの特徴が分かったところで、レジリエンスのない人が育つ要因は大きく以下の3つがあります。
- 権威主義的な親に育てられる
- 愛情を感じられない家庭で育てられる
- 擬似成長をしてしまっている
権威主義的な親に育てられる
子供に対して服従を強いるような権威主義的な親に育てられると、その要求にばかり従って生きることになるため、他人に依存する傾向が強まり、レジリエンスのない人間に育ちやすくなります。
愛情を感じられない家庭で育てられる
愛情を感じられない家庭で育つと、無条件の愛情を通しての心の触れ合いを体験できず、自分に自信を持てなくなります。
そしてそんな親に少しでも認められたくて親の価値観に合わせて生きるようになり、依存していきます。
そうして成長すると、周囲に人がいるように見えても、実際には他者の価値観で生きているため本当の心の触れ合いができず、孤独を感じ、より一層自分への自信を失ってレジリエンスのない人間になってしまいます。
過干渉の家庭ではその傾向が特に強くなるようです。
擬似成長をしてしまっている
擬似成長とは、心理学者のマズローが提唱したもので、実際には満たされていない欲求を満たされたか、それとも存在しないかのように自ら確信しようとしてやり過ごしながら成長していく偽りの成長のことです。
そのような成長をする人は、主に自分の欲求を抑えて親や教師の要求通りに生きているため、側から見れば模範的な立派な人間に見えてしまいます。
しかし、内面的には本当の成長をしていないため、レジリエンスの低い大人になってしまっていることが多いようです。
レジリエンスのない人の末路
ではレジリエンスのない人はどのような人生を送ることになってしまうのでしょうか?
- うつ病になったり自傷行為や自殺に至る
- 犯罪を犯したり引きこもったりしてしまう
- 信頼できる人間がそばにいなくなる
- 消費社会のカモになる
うつ病になったり自傷行為や自殺に至る
自分の本当の感情を抑圧した結果、虚しさや孤独感を感じてうつ病になることもあります。
さらに、現実だと思いたいことを現実だと思い込んだ結果、現在の状況を正しく認識できず、ますます理想とかけ離れていって自信を失い、不健全な攻撃性が内側に向かって自傷行為をしたり、最悪の場合自殺に至ってしまうこともあります。
犯罪を犯したり引きこもってしまったりする
他人に依存して生きていくと、期待通りの他者の助けが得られない時に、彼らに対して『冷たいやつだ』と憎むようになったりします。
すると他者を誰も信じられず、心の支えもないため不安感や孤独感、イライラに苛まれ、引きこもってしまったり、不健全な攻撃性が外側に向いた場合には他者を傷つけたりすることもあります。
信頼できる人間がそばにいなくなる
本当の感情を押し殺したり、自分を偽って他者と接しているので、周囲の人間から信頼されなくなり、見放されて誰も助けてくれる人がいない状態になってしまいます。
その結果さらに自分自身も他者を信頼できず、頼ることができなくなり、さまざまな困難を乗り越えられず心を病んでしまいます。
消費社会のカモになる
レジリエンスのない人は自分の価値観ではなく、他の誰かの価値観を基準に生きているため、人が欲しがるものを欲しがる傾向があります。
そのため「売れている」だとか、「みんな使っている」という商品を欲しがるので、マーケティングしやすい対象、つまり「消費社会のカモ」になりやすいと言えます。
レジリエンスを獲得するために心がけること
レジリエンスのないまま人生を送るとどんなことになるのか、お分かりいただけたと思いますが、レジリエンスがあれば、困難な状況に陥っても回復し、豊かな人生を目指して生きていくことができます。
レジリエンスは先天的というより、育ってきた環境の中で獲得していくものなので、大人になってからでも学習することができます。
ここでは、レジリエンスを獲得するためにどんなことに気をつけて生きていけば良いかを解説していきます。
- 変えられないことは受け入れ、変えられることは変える努力をする
- 自己認識の向上
- 継続的な学習と成長
- ストレス管理と自己ケア
変えられないことは受け入れ、変えられることは変える努力をする
レジリエンスを獲得するような生き方の基本姿勢は、「変えられないことは受け入れ、変えられることは変える努力をする」です。
具体的には他者に認められようとか、好かれようとはしない、ということです。
誰かに認められること自体を目的にすると、コントロールできない他者の感情に依存して生きていることになり、それが達成されないままだと自分にストレスがかかり続けるうえに他者に期待をしてしまってそれが達成されないと不満が溜まったり、不健全な攻撃性が現れてきます。
自分が自分の基準に従って自分の人生を生きている中で、結果的に好意を持たれたり、認められたりという形が理想です。
自己認識の向上
レジリエンスを獲得するためには、自分の感情に正直になり、正しく自己認識をしなければなりません。
その上で自分の強みも弱みも受け入れ、自分が経験してきた困難の本質や意味を理解するよう心がけていきましょう。
もし自分が生きづらいと感じているなら、一度自分に正直になってみてほしいです。自分が信じ込んでいることは何なのか、自分が正しいと思い込んでいることは本当に正しいのかを省みてみてください。
一時的に苦しい状況になるかもしれませんが、結果的に豊かな人生につながるはずです。
継続的な学習と成長
変化が多く、新しいことが日々生まれている現代社会に適応していくためには、継続的な学習を行い、日々成長していくことが求められます。
変化を恐れて何も行動をしなければ困難な状況に陥ったままそこから這い上がることができなくなってしまいます。
変化を恐れず、日々新しいことを学ぶ姿勢で生きていれば、自ずとレジリエンスは身についていきます。
ストレス管理と自己ケア
過度のストレスを感じながら生活をしていると、レジリエンスが低下し、精神を病んでしまいやすくなります。
食事や睡眠時間を適切にとり、健康的なライフスタイルを基本として、マインドフルネス瞑想などのストレス軽減方法を実践していくのが有効です。
まとめ
「レジリエンス」は変化が早い現代社会を生き抜くために不可欠な力です。
ビジネスマンはもちろん、子供が学生生活を逞しく成長していくためにも必要な要素です。
子育てをされている親御さんは、ぜひお子さんが他人に依存しようとしていないか気を配りながら子育てに向かい合っていただきたいと個人的に思います。
レジリエンスを獲得するための心がけは、言葉でわかっていてもそれを実践するのは大変なことだと思います。しかし最初から諦めていてはまさに「レジリエンスのない人」になってしまいます。
少しづつでも、レジリエンスを高めて、豊かなウェルネスライフを送れるようにしたいものです。
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