コーヒーの苦い要素を探求<豆の種類・産地・挽き方・淹れ方>

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一般に「コーヒーは苦いもの」というイメージがあると思いますが、苦味の度合いや質で、この苦味は好きだという人もいれば嫌いだという人もいて、コーヒーの苦味はとにかく複雑な世界です。

ここではコーヒー豆の苦味がどのようにして生まれるのか、そして焙煎の度合いや産地によってどのように豆の性質が異なるのかということを解説していきます。

この記事を読めば、自分の好みに近いコーヒー豆や飲み方を選べ、自宅でコーヒーを淹れる際に苦味を調節できるようにもなります。

それでは解説していきましょう!

目次

コーヒー豆の基本

コーヒー豆の苦味成分に迫る前に、まずはコーヒー豆の基礎知識について確認しておきましょう。

コーヒー豆として栽培されている品種は主に2種類

コーヒー豆として広く栽培されているのは、主にアラビカ種ロブスタ(正式な学名はカネフォーラというが、通称はほぼロブスタのため、以降ロブスタで統一)種の2種類で、この2種が世界で生産されるのコーヒーのほとんどを占めています。

アラビカ種の特徴

  • コロンビア、エチオピア、ブラジルなどの高地で栽培されており、柔らかく繊細な酸味と豊かな風味が特徴。
  • 高品質なコーヒーとして需要が高く、その風味は一般に上質とされている。
  • 世界のコーヒー生産量の60〜70%ほどを占める。

ロブスタ種の特徴

  • ベトナムやブラジルの低地で多く栽培され、強い苦味とフルボディが特徴。
  • 病気や高温に強い特性を持ち、栽培しやすいため安価で流通している。
  • インスタントコーヒーやエスプレッソブレンドによく利用されている。
  • 世界のコーヒー生産量の30〜40%ほどを占める。

 

コーヒーが苦い原因とその成分

コーヒーの苦みはコーヒーの味を構成する重要な要素であり、様々な苦味成分が複雑にまざってその味わいを作り出しています。

その中でも人間が苦味を感じる主な原因となるのは、広く知られているカフェインの他に、焙煎過程で生じるクロロゲン酸ラクトン類ビニルカテコールオリゴマーフェニルインダン)コーヒーメラノイジンなどです。

カフェインの特徴

  • コーヒー以外にも緑茶、紅茶、チョコレートやガラナなどにも含まれるアルカロイドという化合物。
  • 上記のような嗜好品が持つ覚醒作用の本体。
  • 水に溶けやすく、すっきりした苦みを感じさせる。
  • 成分や含有量は焙煎してもあまり変化しない。
  • コーヒーの苦味全体の1〜3割を担っていると考えられている。

クロロゲン酸ラクトン類とは?

  • 焙煎の過程で、コーヒーに含まれる主要な抗酸化物質であるクロロゲン酸類からできる化合物の総称。
  • 焙煎していくと増加し中煎りをピークに減少していく。
  • コーヒーの苦味の中心を担うと考えられる。

ビニルカテコールオリゴマーフェニルインダン)とは?

  • 焙煎の過程で、クロロゲン酸類から分離したカフェー酸(カフェ酸、コーヒー酸ともいわれる)がさらに変化、結合した分子の総称。
  • 焙煎が深煎りになるにつれ増えていく。
  • クロロゲン酸ラクトン類と同じく、コーヒーの苦味成分の中心を担うと考えられる。
  • 強い渋みも持つ。

コーヒーメラノイジンとは?

  • 焙煎の過程で生じる水溶性の褐色色素群。
  • 肉や野菜などを焼いた時に生じる「焦げ」も「メラノイジン」と呼ばれるが、コーヒーを焙煎する際にはクロロゲン酸も反応に加わるため、区別して「コーヒーメラノイジン」と呼ぶ。
  • 焙煎が深いほどこの褐色色素群の分子量が多くなり、黒褐色に近づいていく。
  • 黒褐色に近いほど口の中にこびりつく苦渋味が強くなる。

上記の他にも、黒ビールやカカオの苦味成分であるジケトピペラジン類もコーヒーに含まれており、チョコレートを思わせる味わいのコーヒーの成分ではないかと考えられています。

このようにコーヒーの苦味を形成する要素はいくつもあり、豆の種類や産地によってそれらの含有量が異なり、焙煎の度合いによっても変化するため、それらのバランスがコーヒーの味わいを形成しているということです。

カフェインだけが苦みの要因ではないので、カフェインレスコーヒーでも苦味やしっかりとした味わいを感じることができるのですね!

 

コーヒー豆の産地による苦味の傾向

コーヒー豆の主な産地は中南米、アフリカ、アジアの一部地域です。

今回は「苦味」に基準を置いて産地ごとの特徴を見ていきましょう。

苦味が強い傾向にある地域

インドネシア

<特徴>
  • コーヒー生産量の約90%がロブスタ種。約10%がアラビカ種
  • 生産されているのがほとんどロブスタ種のため、しっかりとした苦味とコクの傾向にある。
  • スマトラ島で栽培される「マンデリン」という銘柄が有名だが、ただでさえ生産量が少ないアラビカ種のうちの数%しか生産されていないため希少性が高い。
  • マンデリン以外にも「ジャワコーヒー(ロブスタ種)」や「トラジャコーヒー(アラビカ種)」などがある。

トラジャコーヒー」も一度生産されなくなって復活したという希少性の高い銘柄です。
「幻のコーヒー」と言われることもあるようですよ!

ベトナム

<特徴>
  • ブラジルに次ぐ世界第2位のコーヒー生産大国。
  • 栽培されているのはほとんどロブスタ種のため、苦味が強い傾向。
  • ロブスタ種は主にインスタントコーヒーや缶コーヒーに用いられるため、ベトナム産のコーヒー豆を目にすることが少ない。

ベトナムコーヒー」と呼ばれる現地の飲み方は、専用の「カフェ・フィン」という専用ドリッパーで抽出し、コンデンスミルクを入れて飲むようですよ!

 

苦味がほどよい傾向にある地域

コロンビア

<特徴>
  • 主にアラビカ種が栽培されている。
  • 甘味、酸味、苦味のバランスの取れた味わい。
  • ナッツや果実のような豊かな香りを持つものも多い。
  • チョコレートやカラメルを思わせる微細な甘みを感じられるものもある。
  • 安価で味のバランスもいいため、ブレンドのベースとして用いられることが多い。

国の国立コーヒー協会による品質管理が行われているので安定して高品質な豆が提供されているようです!

 ブラジル

<特徴>
  • 世界最大のコーヒー生産大国で、全世界のコーヒー生産量の約30%を占めると言われている。
  • 主にアラビカ種が生産されているが、ロブスタ種も一定量生産されている。
  • 味のバランスがよく飲みやすい。
  • チョコレートやナッツのようなほんのり甘い香りがするものもある。
  • コロンビアと同じくブレンドのベースとして用いられることも多い。

南米で一番大きい港である「サントス港」から出荷される銘柄は「ブラジル・サントス」と呼ばれているみたいですよ!

苦味が少ない傾向にある地域

エチオピア

<特徴>
  • コーヒーの発祥の地として知られる。
  • モカ」という銘柄が広く知られている。
  • モカ」に限らず爽やかな酸味と華やかでフルーティーな香りが特徴的。
  • ハーブやスパイスのような香りを感じられるものもある。
  • 基本的にローストは軽めの方が上質な酸味や香りを楽しむのに適している。
  • ゲイシャ」という品種の原産地でもある。(現在ではパナマで生産されているものが有名)

コーヒーや輸入食品の販売で有名な「KALDI」さんの名前は、コーヒーを発見したと言い伝えられるエチオピアの羊飼い「カルディ」が由来となっているそうですよ!

ハワイ

<特徴>
  • コナ」という銘柄が有名で、世界三大コーヒーのひとつ言われる。(ちなみに残り2つはジャマイカのブルーマウンテンとタンザニアのキリマンジャロ
  • コナ」コーヒーは厳格な格付けで品質管理が徹底されている。
  • 口当たりが良く、軽やかな味わいが特徴。
  • クセがなく、飲みやすいものが多い。

アメリカ合衆国に属するため人件費が高く、コーヒーの価格にも反映されてしまっているところが日常的に飲むには手を出しにくいところですね…。

焙煎度合いとコーヒーの味

コーヒーの産地による傾向をお伝えしてきましたが、これから解説する『焙煎(ロースト)』という工程によって、それらが覆ってしまうくらい味が変化してしまうこともあります。

それほどコーヒーの味工程ですのでを左右する、しっかり理解してコーヒー選びの参考にしていただけると嬉しいです。

 

焙煎とは?

「コーヒー豆」とはいいますが、その正体は『コーヒーノキ』という植物に実る『コーヒーチェリー』という果実の『種子』です。

この種子がいわゆるコーヒーの「生豆」となります。

この種子を取り出す「精製」という工程もあり、いろんな手法があるのですがそれはまた別機会に…

この生豆を『グリーンコーヒー』と言ったりしますが、その名の通り緑がかった色合いで、青臭く、そのままに出しても私たちが口にしているコーヒーにはなりません。

そんな生豆を加熱して乾煎りしていくと、次第に褐色、黒褐色へと変化していき、香ばしい香りと苦味を持った「コーヒー豆」へと変化します。

この工程が『焙煎』です。

焙煎の方法と分類

出典:株式会社富士珈機のWebサイトより

焙煎の方法はいくつかあり、ご自宅で手網を使ってガスコンロの直火を使って焙煎する、ということもできてしまうのですが、ここではコーヒー専門店やコーヒーメーカーで一般的に用いられる『焙煎機』の焙煎方式について解説していきます。

 

焙煎は、焙煎機の『攪拌方式』と、『加熱方式』によって分類することができます。

攪拌方式による分類

攪拌方式で分類すると、「回転ドラム式」と「流動床式」に分かれます。それぞれの特徴は以下の通りです。

  • 回転ドラム式・・・横向きに寝かせた金属製の円筒の中にコーヒーの生豆を投入し、焦げないように円筒を回転させながら加熱する方式。最もメジャーな焙煎方式。
  • 流動床式・・・コーヒーの生豆を入れた焙煎室に強烈な熱風を送り込み、攪拌と焙煎を同時に行う方式。強力な送風機が必要なことなどからコストが高くなるため、自家焙煎店で見かけることはほとんどない。

3種類の加熱方式

加熱方式による分類では、「直火型」「熱風型」「半熱風型」で分類することができます。

以下の特徴は以下の通りです。

  • 直火型・・・主にドラム式で、円筒の釜が穴あけ加工されており、ガス火などの熱源に豆が直接触れて加熱されるタイプ。熱効率は良いが、煎りムラが生じやすい。
  • 熱風型・・・主に流動床式で、釜とは別の場所に設けた燃焼室から熱風だけを釜に送り間接的に加熱するタイプ。焙煎にかかる時間が他と比べて短く、煎りムラも少ない綺麗な焙煎豆に仕上がる。
  • 半熱風型・・・直火型に近いが釜に穴が開いておらず、豆は直接熱源に触れるわけではないが、釜は直接熱源にさらされているため、熱源に近い場所とそうでないところで煎りムラは生じる。イメージ的には直火型と熱風型の中間。

一般的に直火型の方がコーヒー豆の表面に焦げを生じやすく、煙臭いような匂いをまといやすかったり、熱風型の方が均一でマイルドな味わいに仕上がるなどの傾向はありますが、焙煎士の技術によって如何様にでもなるため、参考程度に考えて置くのがいいでしょう。

焙煎度合い

コーヒー豆を選ぶ際に焙煎度合いを確認すると、「シティロースト」とか「フレンチロースト」とか書いてあることがあると思いますが、これは現代の世界的な基準ではなく、1930年台頃までの欧米での呼び方をもとにしたものであり、はっきりとした線引きがあるわけではありません。

しかし、日本においてコーヒーを選ぶ際にはおおよその基準となりますし、この分類の仕方が世間一般の認識としても馴染んでいることと思いますので、ライトロースト〜イタリアンローストまでの8段階を記しておきます。

焙煎度合い焙煎度の呼び方
浅煎りライトロースト
シナモンロースト
ミディアムロースト
中煎りハイロースト
中深煎りシティロースト
フルシティロースト
深煎りフレンチロースト
イタリアンロースト

基本的には焙煎度合いが深くなるほど苦味が増す傾向にあり、焙煎度が浅いほど軽やかな味わいで苦味も少なくなります。(ライトローストが一番軽やかで、イタリアンローストが最も苦味とコクが出る傾向がある)

現在の日本ではライトローストやシナモンローストはあまりみられず、ミディアムローストが浅煎りと認識されている印象があります。

ただ、これらの分類に明確な基準はなく、UCCさんのように焙煎豆の色によってWebサイトで示してくれているメーカーありますが(UCCさんの焙煎分類情報はこちらから)、深煎り志向の自家焙煎店などではフルシティに近いものでも浅煎りと称されていたりすることもあるので、その焙煎店の基準や志向を教えてもらうのがいいでしょう。

シティローストのシティとは「ニューヨーク」シティのことで、当時のニューヨークで好まれていた焙煎度合いを指すそうです!

 

コーヒー豆の挽き方、コーヒーの淹れ方

焙煎したコーヒー豆はそのままではなかなかコーヒー成分が溶け出してきません。そのため豆を粉砕して粉状にし、抽出しやすいようにすることが必要です。

これが豆を挽く工程です。

挽き目の細かさや抽出の仕方でも苦味を含めた味の変化が起こります。

コーヒー豆の挽き目による変化

豆を挽く際は電動や手動のミルを使います。

厳密に言えばミルの性能によって粒度のバラつき具合などが違うので、どんなミルで挽くかによっても風味に影響が出ますが、最も重要なのは「挽き目」の細かさです。

以下に5種類の挽き具合と、おすすめの飲み方を記します。

挽き目おすすめの淹れ方
極細挽きエスプレッソ、ターキッシュコーヒー(トルコ式コーヒー)
細挽きウォータードリッパー、ベトナムコーヒー
中細挽きペーパードリップ、コーヒーメーカー
中挽きネルドリップ、サイフォン、フレンチプレス
粗挽き金属フィルター、パーコレーター

淹れ方によって挽き目を調節するのが基本ですが、細かくすればするほど苦味は強くなり、粗いほど軽やかになる傾向です。

基本の挽き方から変化させることで、好みの味に近づけることができます。

抽出温度と抽出時間による変化

ハンドドリップでコーヒーを淹れる際は、挽き目の細かさだけでなく、抽出する際のお湯の温度と抽出にかける時間によっても苦味に変化が生じます。

抽出温度による違い

一般的にバランスよく味わいを引き出せる抽出温度は92〜95℃くらいと言われていますが、温度が高ければ高いほど苦味が出やすくなるので、苦みを抑えたければ少し低めの温度に調節してから抽出するといいでしょう。

80℃くらいが理想という方もいらっしゃったりするので、色々試してみて自分の好みの温度を見つけるのもいいですね!

抽出時間による違い

抽出時間は長ければ長いほど苦味が増しますが、この苦味は質の悪い苦味で、渋味も一緒に増して本来のコーヒーの味を損ねてしまいますので、必要以上に時間をかけないようにしましょう。

自分好みのコーヒーのを見つけるために

今回は「苦味」成分に注目しながら基本的なコーヒーの知識を解説してきました。

<今回の記事のポイント>
  • コーヒーの産地、銘柄で生豆の状態の成分が異なる
  • 生豆を焙煎することで元々持っている成分が変化していき、苦味や風味が強くなっていく
  • コーヒー豆の挽き目が細かくなるほど抽出されるコーヒーの苦味が増す
  • コーヒーの抽出に時間をかけるほど苦味や渋みが増していく

上記のポイントを押さえてコーヒーを楽しむと、自分好みのコーヒーに出逢いやすくなるのではないでしょうか?

今回の記事が参考になれば嬉しいです!

ケイ
ウェルネスライフの探求者
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